個別指導で思うこと

 個別指導塾は、学力に対して施術をする東洋医学の治療院のようだと思うことがあります。子どもの学力の痛みを探りながら、どのような治療をすれば学校の授業に余裕を持って臨めたり、志望校への合格を手にすることができるのかを診断し、最善だと判断した施術を行い、日々の学習に頭を悩ませることなく取り組めるようにします。

 痛みの箇所を特定することは難しいことではありませんが、そこを完全治癒する手段については大いに悩みます。例えば、単純に算数ができないというお子さんの場合、引き算でつまづいているお子さんの治療法は徹底してたし算を強くすることが効果的ですし、わり算の筆算でつまづいている場合は九九と引き算を強化することから学習を始めます。

 図形の面積や体積を求めるのが苦手な場合は、求積の公式の成り立ちを理解させた上で、公式がスラスラと言えるようになるまで暗記練習をします。その後、公式の利用方法を問題解法を通して身に付けてもらいます。

 治療の方法には個人差があり、どうしてもカスタム・メイドのプログラムと長い目を持っての指導が必要になります。突き詰めていきますと、ひとり一人の治療目的を達成するための理想的な指導スタイルはマンツーマン指導に行き着きます。しかしながら、マンツーマン指導はご家庭に高い授業料をご負担いただくというデメリットが発生してしまうため、特別な場合を除いては安易にお勧めすることはしません。その結果として、講師1名と生徒2名という個別指導のスタイルにより経済的な面と指導面との折り合いを付ける選択肢を前面に出してお勧めしているのが現状です。

 確信を持って言えることは、学力に何らかの問題を抱えているお子さんには、できるだけ指導者の目がより多くの時間その子に注がれる指導法をお選びになることが最も必要なことだということです。 はじめだけでもマンツーマン指導を受け、その後個別指導に切り替えるという学習スタイルも効果があると考えます。

 個別指導で驚くことは、講師1名に対して3名以上の生徒が同時に指導を受ける教育システムを行っている塾の存在です。講師に相当の学力や指導力、社会経験などがある場合でも、一度に3名の以上の生徒を個別に指導するというのは、形だけはできるようでも至難の業です。それを本当に大学生のアルバイトや指導経験や社会経験の浅い講師ができるのでしょうか。生徒の大半の時間を問題解答演習に当てさせて、生徒自らが手を上げた時にだけ質問に解答したり、短時間のアドバイスをするだけならできるかもしれません。しかしそれでは、塾通いをしているという体裁を整えるための場としての意味しか感じません。まして、学習する姿勢に問題を抱えている生徒の指導や、学力が低迷し続けているお子さんの根治治療はできないように思います。

 自分が今行っている個別指導でも、1対2の時は、やはりマンツーマンと比べるとやり残し感、指導の不十分さ感が残ります。経済的に余裕のあるご家庭が、家庭教師というスタイルで、勉強なり習い事を選ばれているのには確かに頷けるところがあります。

 しかし、経済面と学習効果の面で、最もコストパフォーマンスが高いのは、講師1名対生徒2名の個別指導だと思います。授業時間の全てにおいて講師を独占することはできませんが、できるだけ無駄な時間のないように、わからない問題についての指導を受ける時間と問題解答に取り組む時間とをうまく配分できるようになると、とても効率が良く、より質の高い学習をすることが身につきます。

 学校の成績がほぼオール5かそれに近いお子さんであれば、どのような指導形態でも学力はつくでしょう。ですから集団指導の塾であっても何ら問題はありませんし、逆に競争相手の多くいる場がその子をさらに伸ばす可能性があります。しかし成績が平均あるいは平均を下回るお子さんの場合は、一度は個別指導あるいはマンツーマン指導をお受けになることをお勧めします。そして、個別指導型の塾をお選びになるときには、講師1名に対して生徒2名を最大数とする個別指導塾をお選びになってください。指導のときはもちろんですが、問題解答の時もお子さんの手元に目を注いでくれる講師の存在は、長い目で見たときにとても頼りになるものです。講師が頻繁に変わる個別指導塾は論外です。

 ご家庭の大事なお金とお子さんの大切な時間を費やす補完教育の場は、しっかりとした目でお選びいただきたいと切に思っています。